ミズトラの会版「翻訳支援ツール超入門」-再びシンハムさんをお迎えして

5月に引き続き、6月もTRA Cafe主催者のシンハムさんこと小林晋也さんをお迎えして、タイトルの翻訳支援ツール講座を開催しました。



翻訳ツールに関しては、興味や関心を持つ人も多く、今回も40名に近いお申し込みをいただきました。盛況でありがたい限りです。

小林さんからのお言葉を最初に紹介しておきます。

これまでにも翻訳支援ツールには、その是非を巡ってさまざまな議論がありました。 翻訳者が導入するかどうかはともかく、すでに多くの翻訳会社が何らかの翻訳支援ツールを導入し、ツールの使用を前提とする案件が増えている現状を無視することはできません。 そこで、今一度「翻訳支援ツール」とはどういうものかを検討し直してみます。翻訳支援ツールについてよく知らない方だけでなく、すでに導入済みの方、導入を検討されている方、導入しない方にも有益な話をする予定です。

概要

  1. 翻訳支援ツールとは ~そのメリットとデメリット~
  2. その他のツールについて(翻訳作業を補助するためのツールの紹介)
  3. 翻訳支援ツールの実演(Trados Studio 2015 & memoQ 2015) 


内容の詳細に関しては、ご出席者にテキストを配布いたしましたので割愛いたします。

個人的には、私は現在、TRADOSとMemoQを所有しており、主に後者のMemoQを使用しています。いまだエージェントおよび直受けクライアント共に、ツールの使用を前提として依頼を受けておりませんが、自分のメモリ構築のためにツールを使用している状況です。

翻訳者の翻訳ツールへの対処方法としては、当然ながらこの2つです。

I.翻訳ツールを使用しない

どのような分野であれ、固有名詞やそれに近い専門用語などの用語集を使用したり、マクロやその他のツールを使用したりしている方はほぼ100%かと思われます。ここでは、翻訳ツールとは、いわゆる翻訳支援ツール(Trados、memoQ、Omega、Tratool、Worfdfast、Pattranserなど)を指します。

小林さんもセミナーで言ったとおり、翻訳ツールを使用しないというスタンスの方もいらっしゃるでしょう。様々なTipsや他のソフトなどを自分なりに活用し、支援ツールに近い翻訳手法を編み出して、その方を良しとする考えもありかと思います。小林さんが2.でいくつか紹介してくださいました。

II.翻訳ツールを使用する

現時点で、翻訳ツールを全く採り入れていないという翻訳会社は少数派でしょう。特に海外大手ローカライザーの案件はほぼツール必須かもしれません(当然分野によります)。個人的には、この趨勢は今後とも加速していくと想像します。そのため、新規開拓先を拡大するためには翻訳ツールを採り入れる、もしくは私のように、案件にこだわらず積極的に使用する、という選択も考えられます。


いずれにせよ、翻訳者は流されるのではなく、自らが主体的にどうするかを選択し、決定しながら、自分スタイルを確立していく必要があるでしょう。

言うまでもなく、ツールは「支援(お手伝い)」してくれるだけで、「翻訳」を代わりにしてくれるわけではありません。これさえあれば、効率が上がって、収入も一気に増え、翻訳の質も向上するという『魔法の杖』ではありません。地道な本体の勉強も忘れたくないものです。会員様のレポートもどうぞ併せてお読みください。






また次回、お目にかかれる日を楽しみにしております。




2016年6月18日土曜日
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翻訳者のためのパソコン超入門

「翻訳者のためのパソコン超入門」 基礎からわか~るハードウェア・OS編


と称しまして、今回はTRA Cafe主催者のシンハムさんこと小林晋也さんをお迎えして、タイトル通り初心者向けPC講座を開きました。






翻訳者にとって最大の恐怖?パソコン「突然死」への備えは済ませていらっしゃいますか?うちに帰って早速自分のPCを見直しました。セミナーのレビューとして、参加者の声を紹介いたします。


今回、小林晋也先生の「翻訳者のためのパソコン超入門 基礎からわか~るハードウェア・OS編」に参加させていただきました。「超入門」「基礎からわか~る」…これなら未だガラケーを愛用する私のようなデジタル「超初心者」でも参加できるかもと思い申し込みをしました。

仕事をしていくうえで、パソコンは自分の手足に等しいのにも関わらず、何となく使っていても何とか業務はできるということから、ほとんど初期設定のままパソコンを酷使していました。しかし、先生の講義を受け、大反省。これはまずい…と感じ、「帰宅したらすぐにやらなきゃいけないこと」を先生の講義をききながらリストアップしました。そして帰宅して一番に実行したことは、デスクトップ上のフォルダの整理。背景の写真がこんなに綺麗だったなんて…パソコンにとっても自分のメンタルヘルスにとっても良い効果をもたらしてくれそうです。

今回参加していなければ、今は健康な私のパソコンは突然死を迎え、その時になってあたふたするような事態に陥っていたでしょう。先生の講義を受け、実は工夫できることがたくさんあるのだということを知りました。

また、有難いことに、まるで書籍のような詳細な配布資料(分厚い冊子)をいただけました。講義では様々な情報をいただき、私の脳の記憶容量がぱんぱんになりましたが、この冊子のおかげで一つずつ復習できます。


私たちに分かりやすいようにペースを合わせご説明いただいた小林先生、会の開催にあたってご尽力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。次回のセミナーも楽しみにしております。

TK様


ハードウエアの基本的な構成、購入/アップグレードを考えるときはどんな点に注意すればいいのか、トラブルを防ぐ/トラブル発生時に慌てないため には日頃どんなことに気を付けておけばよいのか、快適に作業するためにはどんな点に気を付ければよいのか、といった、それなりにPCの知識がある方には、 「当然」と思われるような、しかしワタクシにとっては非日常(?)のアレコレを、体系立てて説明して頂き、すでに知っている内容もいくつかありましたが、 全体としては、これまであった「点」としての知識が、細い線で繋がったような感じです。「こうだから(こういう理由で)こうなる」が好きなワタクシは、こ れまでより少し自信を持ってパソ子を酷使することができそうです。

「初歩的な質問大歓迎です」という講師の言葉に、ワタクシも含め、初心者の質問が乱れ飛び、そのたびに話は脱線し、また本筋に戻るを繰返し、4時間という時間をまったく長く感じませんでした。
講師の方のお人柄かもしれませんけど、「・・・これ聞いたら笑われるかも・・・」というようなことが、小心者のワタクシでも、さくさく聞けてしまうんですよね。

それは、恐らく、Kさんが、「こうするのがいいよ」ではなく「あなた(自分)にあったPC環境を作るにはコレコレを知っておくのがいいですよ」というスタンスで話をしてくださったからではないかと思います(とワタクシは勝手に誤解しています)。

ど んなに使い慣れた方が「こうするのがいい」と仰っても、そのやり方が自分にとってベストではない場合もあります。でも、(特に、権威に弱く影響を受けやす い自分の場合は、なのですけど)その道のずっと先を行かれる方々に「これがいいよ」と何かを紹介されると、「おお、それではとりあえずやっておこう」とか 思ってしまうんですよね。というか、そうしないと、取り残されたような不安な気持ちになってしまうという・・・。もちろん、それで上手くいったものも多い ですが、使いこなすことができず、それを使った場合のメリットも体感できずに、そのままにしてしまったものも結構あります。

それは、たぶん、ワタクシに基礎知識が欠けていたせいだと思うのですが、昨日のセミナーは「では、自分でその判断がしっかりできるように、基礎知識を入れておきましょう」というセミナーだったように思います(少なくともワタクシにとってはそんな感じでした)。


「自 分で考えて判断する」は、特にPC周りのことには限らず、翻訳や、翻訳以外のことにも言えるわけですが、今は、あまりにもたくさんの情報が溢れていて、と きどき、どこまでが(どこからが)本当に自分で考えたことなのか分からなくなってしまうことがあります。そうならないためには、やっぱり、信頼できる様々 な立場のソースから情報を仕入れ、しかも仕入れ過ぎない、ということも大切なのかもしれません。ここしばらく、自分は少し情報酔いしていたかもしれない、 とそんなことも考えたりしました。

一部抜粋 HM様


さて皆様、セミナーの様子、何となくつかんでいただけましたか? 来月にはPC講座後編を主宰いたします。ご興味ある方はご遠慮なく連絡くださいませ。





PC.相変わらず懇親会とセット。ベルギービア楽しむKYOKOがしっかりと映っております。
2016年5月7日土曜日
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平野先生セミナーレポート


私はもともとはITが専門なのですが、ここ最近はやや分野違いの案件が増えてきて苦戦しているところでした。テクニカルライティングに必要な「3C」(Concise, Clear, Correct)はもちろん、読み手を引き付けるエンタメ的な要素も求められ、今さらながら改めて翻訳の難しさを実感することもありました。

そんな中、まるで迷える子羊に手を差し伸べるかのように開催されたこのセミナーに参加させていただきました。事前課題として出された和訳/英訳について、先生や参加者の皆様がたと意見を交わし合ったのもとても有意義でしたが、特に「大きな古時計」の訳詞には衝撃を受けました。言葉を足したり削ったり、順番を変えたり…メロディにのせなければならないという制約があるにもかかわらず、原文の「空気感」をちゃんと伝えるべくさまざまな工夫がなされていることに目から鱗が落ちるような思いでした。とても有益なヒントを得て、長いトンネルの出口が見えてきたような気がします。

今回のセミナーの一番の収穫は、何よりも平野先生の「ことば」に対する愛情を感じたこと。何も知らないまま翻訳の世界に足を踏み入れたときの、意欲と熱い気持ちを思い出しました。平野先生、参加された皆様、本当にありがとうございました。
YS様


セミナー当日は、まだとても寒く感じましたが、さわやかに晴れた日となりました。会場は第3ビルの11Fでセミナー会場だけがなんだか明るい雰囲気が漂っているようでした。入口で平野先生がリラックスした感じで皆さんとおしゃべりなさっており、ミズトラの会だけに男性がいるということは先生に違いないと思いましたが、そうでなければ既に顔見知りのような楽しそうな雰囲気でした。それを見てちょっと緊張がとれました(笑)。

それでもセミナーが始まると、まずテクニカルライティングの内容からでしたが、原文の理解の大切さを実感するような、その解説に身が引き締まる感じがしました。テクニカルライティングは全員が誤解しないことが大前提ですが、例えば、「DVD4枚買うと1枚タダ」を翻訳する時に、4枚目がタダなのか、5枚目がタダなのかがこの文から明確ではなく、どういう訳文が考えられるかなど、その解説にセミナーに来てよかったなーと実感してしまいました。

それが休憩のあとのエンタメライティングに入ったとたん、まずいなーという気分になってしまいました(笑)。テクニカルライティングと違って訳に正解がなく、でもこちらの方が感じでてるでしょというthe 英語のような世界に入ってしまい、課題の訳文発表を先生にあてられないように、先生がこちらを向けばだるまさんがころんだ状態でひたすら目を合わせないようにして固まってしまいました(笑)。勉強初心者(?)の訳文を例に挙げていましたが、いやー、私のはもっとまずいような気がするわの連続でした(泣)。情けなくて、普段はペーパーバックも楽しんでいますが、英語はできますはもう言わないと思ってしまいました。もちろんこれは私だけの話で、セミナー参加の皆さんは次々と訳文を発表されて、なぜかここでも身が引き締まる感じがしました(泣)。まだまだ勉強が足らないようです。

後半の妙な緊張感が終わり、懇親会に入ると、先生は色々と自虐ネタを披露してくださり、本当に心優しい、包容力のある方だなあと思いました。内容については是非次回の先生のセミナーの懇親会で先生から聞いて頂ければと思います!なかなか衝撃的なお話でその後、参加者の皆さんのお酒のペースが速くなったような気がするのは私だけでしょうか?

先生がおやじギャクとおっしゃって何度もご披露して下さったのが、まさにルー大柴ワールドでした。なんでも英単語に置き換えてしまい、最後はほろ酔いの頭にはちょっと面倒な感じでした(笑)。

本当に刺激的で楽しい1日となり、平野先生のセミナーがまた開催されるときは是非参加したいぐらいです。本当に参加したいのはセミナーなのか懇親会なのかはよくわかりませんが。是非、皆さん次回のセミナー期待しましょう!ルー先生お待ちしております(笑)
EK様

2016年2月21日日曜日
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平野信輔氏セミナー「テクニカルライティングとエンタメライティング」




昨日はいつものミズトラの会で、工業英語の指導者として有名な公益社団法人日本工業英語協会 理事、平野信輔氏をお招きして

「テクニカルライティングと、エンタメライティング。そして、英語と日本語」

というセミナーを開催いたしました。ちょっと珍しい切り口のセミナー。最近は技術文書の翻訳を請け負うことが多く、エンタメ系の英語に触れることが比較的少なくなった私にとってとても新鮮な授業でした。一部を以下に紹介いたします。

★英訳
好きになってはいけないと思ったら、恋の始まり。
好きでいないといけないと思ったら、恋の終わり。

★和訳
One of the best feelings in the world is knowing your presence and absence both mean something to someone.

さて、あなたならどう訳します? 英訳はやっぱり時制が苦手です。今回も見事に引っかかりました。

翻訳は本当に難しい、そんな当たり前のことを時には忘れてしまって、仕事をこなしているうちになんとなくできている気持ちになってしまうのが怖いところです。セミナーのタイトルにあるように、たとえば英語と日本語。両者の言葉の使われている環境、宗教観、歴史、いろいろなものが1つ1つの単語の根底にあって、それを表現することは、ネイティブでない私には本来至難の業なのです。

たとえば、
「はんなり」という言葉を聞いたとき、京美人の上品で華やかな面影がふっと浮かびます。「じめじめ」という言葉を聞いたとき、梅雨辺り、肌に汗で下着がまとわりつくような感覚が浮かびます。そんなふうに経験と結びついた感覚と言葉とはフィットしています。それが言語の役割でしょうから。京都という場所を知らない人、砂漠に住んでいる人、そうした人々がこうした日本語を英語にするのはきっと難しいでしょう。

上記の格言のようなものは、汎用性がありつつも、人種の違いが感じられたりもして、翻訳の勉強になるなと今回教えられました。FACEBOOKには、このようなちょっといい言葉などが投稿されるサイトがいくつかあるそうです。先生から教えていただいたものをチェックして、表現を習っていくつもりです。


さて、私は和訳の方を板書する役になりました。言い訳ですけど、予習ができなかったのでぶっつけ本番です。女子高生(笑)になって訳してみました。

あたしがいるときも
あたしがいないときも
なんか違う・・・って思ってくれたら
むちゃ嬉しいの。

ちなみにこの訳はツッコミどころ満載です。でも、スタンダードに誰にでも共感できる言葉に訳すことも、同僚同士、親子と考えて訳すこともおそらく可能で、シチュエーションを想像しながら映像翻訳のように言葉遊びをするのも翻訳の楽しみなんですね。--「存在」と「不在」とが誰かにとって何らかの意味をなすと実感できること--、どちらの課題も深イイ言葉だと思います。


もちろん打ち上げもセットです。お魚もお酒も美味しゅうございました。


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翻訳者のオカネのはなし




昨日は「ミズトラの会」でセミナー「翻訳者のオカネのはなし」を開催しました。「オカネ」というフレーズに釣られたのか?今回は45名の申込みがありました。

見出しのみ以下紹介しておきます。

第1部:プレゼンテーション

*KY(翻訳者)「気がつけば20年」
●翻訳道紆余曲折(自己紹介)
●どういう翻訳者を目指すのか
●仕事を絶やさないために
●法人化と収入管理

*MY(翻訳会社経営)「翻訳、会社にしちゃいました」
●起業したワケ
●起業して分かったこと、起業して良かったこと
●技術翻訳業界のサプライチェーンとは
●これからの翻訳者さんに向けて
●今後のビジョン

*KK(翻訳会社社員)「選ばれる翻訳者とは? 〜お客様が求める翻訳、翻訳会社が求める翻訳者〜」
●私自身と翻訳
●翻訳会社の業務と翻訳の流れ
●よい翻訳とは?依頼したい翻訳者とは?
●特許、特許翻訳を取り巻く環境、翻訳業界の課題
●翻訳の理想を求める

*ゲストスピーカーRM(翻訳者)「私が『一人親方』でいる理由」
●四半世紀の経験
●医薬翻訳業界の特徴
●何を目指すのか?
●何がネックになるのか?
●自分の力を最大限に発揮するために

第II部:パネルディスカッション

●翻訳会社のトライアル以外の特に直受け向けの営業活動
●現在のクライアントへの営業活動、単価交渉
●翻訳業界の現在、翻訳者としての実感

第III部:懇親会

もちろん、これだけの人数で、この業界を把握しきれるわけではありません。翻訳者のほんの一部やエージェントほんの一部の考えや現状、意見などを1日のうちに交換しただけなので、上澄みをすくったのに過ぎないのかもしれません。でも、様々な立ち位置からの話を伺っていて、そして事前の打ち合わせを通じて、自分の視点や目標がいかに一元的であるかを再認識しました。

「オカネ」、その元になる働き方や仕事に対する姿勢は、人生観や価値観、年代や環境によって大きく変動し、そして同じ人間の中でも現在いるステージとともにるる変わっていくものと思われます。これが正解というものはおそらくなく、自分が選択していくものです。業界という言葉を上では使いましたが、翻訳は非常に広い産業界とつながっているもので、自分なりの工夫ややり方を発見できる仕事です。自らのブレークスルーを若い人々に見つけて欲しいと思っています。


難しいテーマですが、ぶっちゃけトーク、できたと思います。基本的にクローズドな会でもあり、いつもよりもさらに個人的な内容を含むため詳細は公開いたしません。

そしていつも通り、打ち上げも楽しく。

梅田「Kirara」にて


2015年8月29日土曜日
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翻訳者のオカネのはなし-参加者レビュー



今回のセミナーでは、「翻訳者とオカネのはなし」というテーマだけあって、翻訳レートや収入などに着目したお話が多かったです。とりわけ印象に残っているのは、パネリストの1人がおっしゃった「プロとアマの違いはスピード」という言葉。こなした翻訳の量や分野、習得した知識が多ければ多いほどスピードに反映されるのだから、なるほど「スピード」か、と納得しました。

そして「スピード」を重視しているためかレートにはそれほど拘っていらっしゃらない印象を受けました(あまりにも安い単価は論外だと思いますが)。確かに、レートが少々低くても、一時間、一日に処理できる語数が増え、仕事がない期間を減らせば、結果的には収入は伸びていくのだから、1円、5銭のレートの違いに固執する必要はそれほどないのかもしれないと思いました。

「安いレートで受ける翻訳者がいるから翻訳業界は値崩れを起こし、フリーでやっている本当に実力のある翻訳者が生活できなくなり廃業する、だから『低単価で受ける=悪』である」というようなことを以前に聞いたことがあります。自分もその考え方に捕らわれていた部分があったのですが、今回のセミナーではこれと真逆のこと(もちろん、単なる「安売り」ではなく、自分なりの理念あるいは考え方に基づくリーズナブル単価)を聞き、目から鱗が落ちました。一方、自分ブランドとクオリティを高め、差別化したレートを設定し維持しているというベテラン翻訳者もいらっしゃいました。

「翻訳業界のサプライチェーン」というお話では、ユーザー(エンドクライアント)と、メーカー(翻訳エージェントへの依頼者)のニーズが異なることがままある、そして末端のフリーランス翻訳者とメーカーの間に立つ翻訳エージェントが当の客の要望をよく分かっていない場合がある、ということを面白い例えで説明していただきました。自分は、サプライチェーンのどこのニーズに応えていけば、リピートオーダーの来る翻訳者になれるかということを考えました。


今回は、今まで井の中の蛙状態で翻訳をしていた私が、翻訳という仕事、そしてその対価としての報酬を多角的な視点から知り、考えることができ、自分の翻訳に対するスタンスを見直すきっかけを与えてくれた貴重なセミナーでした。

ET様




「翻訳者のオカネのはなし」というテーマのセミナーでしたが、まさに翻訳業界の「オカネ」の仕組みが図式化できてしまうような、非常に有益な情報を得ることができました。

パネルディスカッションのトピックの一つである「翻訳会社のトライアル以外の特に直受け向けの営業活動」は、最近個人的によく考える内容でしたので、とても興味深く拝聴いたしました。

私は現在、フリーランス翻訳者として翻訳会社に登録して仕事を頂いているのですが、原文に対する疑問をクライアント(メーカーや特許事務所)に直接相談できないことが、作業を進める上でストレスに感じてしまいます。クライアントから直接仕事を請ける“直受け”であれば、メールや電話一本ですぐに解決できるので、作業効率もアップするのになぁ…と、モヤモヤすることがよくあります。

この点は、セミナーでも、「仕事の上流(クライアントの本意)を探る」というテーマで先輩からお話を頂きました。クライアントと翻訳者の間に、翻訳会社などのエージェントが入ると、どうしてもクライアントの本意が翻訳者に伝わりにくくなり、またその逆もしかり、という内容でした。クライアントと直接コンタクトを取るということは、正確な翻訳につながる。また、クライアントからのフィードバックを翻訳者に伝えることは、翻訳の質を上げるためにとても重要。そういった意味では、クライアントと翻訳者を繋ぐエージェントはとても大切な存在だけど、残念ながらその存在が上手く機能できていないケースもあるそうです。

セミナーのメインテーマである「オカネ」の面でも、直受けに夢をはせていました。エージェントを介して仕事を請けるよりも、直受けの方が、当然レートも高くなり収入アップにつながるだろうという浅はかな予測から、私もいつか直受けで仕事をもらえるような実力を身に付けたいなぁ…と考えておりました。

そんな憧れの直受けですが、必ずしも良い面ばかりではないことを、今回先輩方のお話から垣間見ることができました。

直受けの場合、仕事の依頼がイレギュラーだったり、急だったりすることが珍しくなく、その上、色んな雑務も引き受けなければならないこともあるそうです。エージェントを介すると、その分当然レートは低くなるけれど、私のようなフリーランス翻訳者が働きやすいように、見えない所で多大な労力を費やして下さっていることに、改めて気付かされました。

高いレートで手間のかかる仕事をするにせよ、低いレートでやりやすい仕事をするにせよ、最終的に“時間単価”を見定めて今の自分に一番合った働き方を模索するという道を、今回のセミナーで発見することができました。将来、翻訳者人生の岐路に立った時、今回のセミナーで先輩方から得た知識が、きっと道しるべ、心の拠り所になってくれると思います。本当にありがとうございました。

MR様


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