Archive for 12月 2014
治験翻訳セミナー(III)
「治験翻訳セミナー」
「治験翻訳」と銘打たれたセミナーでしたが、実際はもっと広い範囲を対象とする内容でした。
講師先生は海外の大学で言語学を修められた方で、ご自身の経験に裏打ちされた言語学的な視点からのお話はどれも新鮮で、4時間という長丁場でしたが、集中力を(あまり)切らさず、最後まで拝聴することができました。
「第二言語の能力は、決して第一言語の能力を超えることができない」というSecond Language Deficit理論も印象的でしたが、セミナーを通じて一番強く感じたことは、和訳でも英訳でも文の構造理解が重要だということです。
英訳については、
1. 主語と述語をまず決める
2. 述語動詞の属性(Tense、Aspect、Modality)を決める
3. 名詞の属性(単数/複数、定冠詞、不定冠詞、無冠詞)を決める
4. その他の部分を訳す
という4ステップを、また和訳については、
1. (英語のまま)文の必須要素のみで構成される文に単純化する
2. 単純化した文を日本語の構文に従って和訳する(命題文)
3. 命題文を基幹として自然な訳文を作る
4. 論理展開に従って段落構造に整える
という4ステップを教えて頂きました。
まずは土台(幹)を作り枝葉を付けるというやり方ですね。
思い返してみれば、自分も、普段の翻訳作業は同じように進めているのですが、ステップとして明確化したことはありませんでした。こうして明確化してみると、自分はどこが弱いのか、解釈を間違った場合はどこで間違ったのかといった確認が以前より容易になりました。基本的なことですが、「(文の)構造を意識する」ということの重要性を再確認した思いです。
他にも意味の似た動詞のグループ化、手本とすべき文章は何か、英語力/日本語力の強化法、冠詞のトレーニング等、実際的な情報もたくさん教えて頂きましたが、ここにはとても書ききれません。それほどに濃い内容の4時間でいた。
頂いた資料の中に、先生の解釈される「翻訳とは」が記されています。
(当日頂いた情報はすべて使用可とのことでしたので以下に転記します)
定義
翻訳とは単語レベルでの単純な置き換え作業ではない。
翻訳とはある言語で書かれた情報を正しく解釈し、
別の言語を用いてその情報を再生する行為である。
翻訳の理想形
STAGE1 移行された情報が等価であること
STAGE2 表現された意味が明快であること
STAGE3 意図された機能が発揮されること
STAGE4 再生された表現が自然であること
昨年いくつかの著名な先生のセミナーに出席する機会がありました。突き詰めてみれば、どの講師先生も表現の仕方こそ異なりますが、同様のことを仰っていたような気がします。
1年の最後に「翻訳とは」を自分の中で再確認することができ、よい締め括りとなりました。
HM様
スクールアルパ・リエゾンの有馬先生を講師に招いて行われた「治験翻訳セミナー」に出席してきました。有馬先生のお話は大変興味深く(そもそも先生ご自身の経歴が興味深い!)4時間の長丁場を感じさせないとてもインセンティブなセミナーでした。
最も印象に残ったのは、「翻訳とはインプット(原文理解)が9割、アウトプットが1割。そして原文に書かれている情報を理解するために必要な知識は2年あれば習得できる」というお話でした。先生は、理系・文系というバックグラウンドの違いは医薬翻訳者にとってなんら関係ない、という考え方ですので、この2年という期間はもちろん文系出身者にも当てはまるということです。医薬どころか理科のレベルでつまずいている私にはにわかに信じがたい話でしたが、参考にするべき文書、HPなどを紹介しつつ説明してくださいました。「単なる知識ですから覚えればいいんです。」先生のことばで、文系出身ということを言い訳に怠けていたのを言い当てられた気がした反面、覚えればいいだけならなんとかなる、と自信を持つことができました。2年間継続して地道に勉強するのはなかなか難しいことですが、ゴールの見込みもなくやみくもに勉強するのと、正しいとわかった道を行くのとではモチベーションが全く違ってきます。先生のポジティブで明快な説明は励みになるものでした。
「アウトプット1割」の部分についても、(英訳においては)動詞の座標軸を持つこと、冠詞を決める際自分の基準を持つこと、論理展開を考えて接続詞を入れることなど、実践的な翻訳向上のための方法を教示してくださいました。理解した原文の情報をできる限り過不足なく自然な目標言語に「再生する」ことが翻訳の要であるということは誰もが理解できるところですが、そのためにどうすればいいのか。一つ大切なのは自分なりのブレない基準を持つこと、とおっしゃられていました。ブレない翻訳のためにはどの訳語を充てるにも自分なりのルールに則って行うこと。そしてそのルールは自分が納得のいくものでなければならないということ。翻って自分の場合を考えると、ともすれば「雰囲気で」または「流れで」訳語や冠詞を選択することもあり、なぜその訳語を選んだのか一貫して筋の通った説明をすることができないのが現状です。確固たる自分なりの基準を持って初めてアウトプット1割と言えるのであり、そのためには、突き詰めて文法を勉強することが必要だと思いました。
目の前の仕事をとりあえずなんとかこなす日々ですが、今回セミナーに参加して、「医薬翻訳者に必要な力とは何か」を考える良い機会になりました。そして自分になにが足りないか、これからなにを勉強していかなければならないか、再確認ができたように思います。
YT様
治験翻訳は全く未経験の分野なので、セミナー前にはずいぶん腰が引けていたのですが、参加してみたら、「楽しかった!」の一語につきました。
当日にいただいたセミナー資料をめくって思い返してみると、「そもそも翻訳とは?」「先ずはモノリンガルトレーニング」といった、どの分野にも共通する項目から、「医学英語のスタイル」といった項目まで、幅広く網羅されていました。カラー印刷された「冠詞のトレーニング」との項目では、日本語を見て冠詞を決めてみる(名詞に色をつけてみる)など、斬新なトレーニングもありました。
セミナーでは、他では聞かないようなわかりやすい例えが満載で、翻訳者としては異色(?)の経歴をお持ちの有馬先生の知識の豊富さを垣間見た思いです。例えば、コンマやコロンなどのパンクチュエーションを音符に例えたり、和訳文を松の幹とその枝葉に例えたりで、ストンと自分の頭にはまった感じがします。また、「接続詞とは世を忍ぶ仮の姿で、その実体は・・・」との言い回しで心を鷲掴みにされ、「パラグラフは、(文と文との)チームプレー」との説明で目がハートになり、一日ですっかり有馬先生のファンになりました。
英語、日本語のブラッシュアップと共に、治験翻訳の勉強にも挑戦したくなる、盛りだくさんの4時間でした!
当日にいただいたセミナー資料をめくって思い返してみると、「そもそも翻訳とは?」「先ずはモノリンガルトレーニング」といった、どの分野にも共通する項目から、「医学英語のスタイル」といった項目まで、幅広く網羅されていました。カラー印刷された「冠詞のトレーニング」との項目では、日本語を見て冠詞を決めてみる(名詞に色をつけてみる)など、斬新なトレーニングもありました。
セミナーでは、他では聞かないようなわかりやすい例えが満載で、翻訳者としては異色(?)の経歴をお持ちの有馬先生の知識の豊富さを垣間見た思いです。例えば、コンマやコロンなどのパンクチュエーションを音符に例えたり、和訳文を松の幹とその枝葉に例えたりで、ストンと自分の頭にはまった感じがします。また、「接続詞とは世を忍ぶ仮の姿で、その実体は・・・」との言い回しで心を鷲掴みにされ、「パラグラフは、(文と文との)チームプレー」との説明で目がハートになり、一日ですっかり有馬先生のファンになりました。
英語、日本語のブラッシュアップと共に、治験翻訳の勉強にも挑戦したくなる、盛りだくさんの4時間でした!
MM様
治験翻訳セミナー(II)
今、治験翻訳といえばこの人だと第一に名前が挙がると思われる有馬貫志先生。初めてこの評判の先生の講義を受けることができてとても幸せでした。
先生のスクールでは約1000名の生徒が巣立っているそうです。セミナーではその人気のもとは、先生の知識とお人柄からくるのだろうと実感できました。
イギリスで言語学を研究なさって得た知識を存分にわかりやすく教えていただけました。例えば、翻訳するに当たって一番の壁となるものは「第一言語の壁」だというSecond Language Deficit 理論。第二言語(私の場合は英語)の能力は、決して第一言語(私の場合は日本語)の能力を超えることができないということを知りました。確かに日々、翻訳には英語力だけではなく日本語力は大事だと思っていましたけれど、同時に私は和訳よりも英訳の方が好きでしたので、英訳の仕事を好んで受注してきました。でも、検定試験やトライアルの結果は実は和訳のほうがよいのです。個人の好みというものはあるけれど、英語を書くより日本語を書く能力の方が上だということですね。
例えば日本語で100書ける能力があるとすると、英語で書けるのは80だそうです。和訳で100の能力があったとしても、英訳では80の能力しか発揮できないということになります。もちろん和訳では英語をどれだけ読み込めたかという別の問題はありますが、アウトプットだけで評価すると理論的には日本人は和訳の方がうまいはずなのですね(個人差はあるそうです)。
これは、日本人は和訳だけをすべきだという訳ではなく、先生は英訳も和訳も両方すべきだとおっしゃります。ただ、英語力向上のためには日本語のブラッシュアップが不可欠だということです。
セミナーでは具体的な英語と日本語のブラッシュアップ方法や調査のヒントなども触れられました。ちょうど2015年が始まる節目の時期ですので、先生が教えて下さった方法を2015年のスケジュール帳に落とし込んで、実践していこうと思っています(既に冠詞の勉強については書き込みました)。あとはやるだけなので、初心を忘れずに努力すると共に、自分の好き嫌いとは別に日本人である限り和訳は英訳よりできるはずだということがわかったので、どちらの仕事も受注できるようにオープンでありたいと思います。
KK様
今回のセミナー、事前課題もあったうえ、開始早々「あとで隣の方とペアワークをしてもらいます」という先生の発言に緊張はMAX。でも、時に冗談を交えつつ、優しい語り口ではあるけれどエネルギッシュな先生の講義は4時間という長丁場を感じさせないものでした。
言語学の観点からみた先生のアプローチ法はどれも難しいものではありません。言語を構造的に理解するための例として挙げてくださった日本語の「は」と「が」の用法、句読点の用法、基本動詞の使い方など、日頃何気なく使っていて実はよくわかっていない規則性を意識化していくことの大切さを実感しました。そして冠詞のトレーニングなど、自分の言語能力を高めていくための具体的な方法はすぐにでも実践できるものでした(ただしそれを継続していくことができるかどうかはもちろん個人の努力次第ですが)。
私自身は医薬翻訳に携わって10年以上経ち、さすがに仕事に対する緊張感も薄れてきた今日この頃。「長年の経験を生かして」といえば聞こえはいいですが、なんとなく感覚でやってしまっている部分も多く、あらゆることを意識化していくという作業を忘れていたように思います。
日頃ひきこもり生活ですし年末の忙しい時期ということもあって、正直今回のセミナー参加に躊躇する部分もあったのですが、とてもよい刺激になり、参加して本当に良かったと思いました。そして打ち上げはさらに楽しく、自称「人見知り」が多い翻訳者ですが、初対面の方とも意気投合し、おしゃれなレストランで居酒屋並みに盛り上がるテーブル席・・・今年を締めくくるのにふさわしい忘年会となりました。
YF様
「情景を言葉にする」、それが翻訳なのだとは思いませんでした。
例えば画面に映し出されたある状況。それを実況中継するがごとく言葉にしていく、それが翻訳なのだと先生は教えてくださったような気がします。まるで見たまま感じたままを言葉にするような、原語、日本語の枠を超えた実況中継。翻訳とは自分というフィルターを通して自分が得た情報を的確に読み手に伝えること、そういうことなのかもしれません。先生独特の「翻訳ワールド」に引き込みつつ、すぐに役立つ細かいテクニックも散りばめられた今回のセミナーは、すでに仕事を始めた自分にとって「翻訳とは何か」を再考させてくれるものであり、日々の訳出作業のあちらこちらで活かせるコツを教えてくれるものでもありました。
翻訳ワールドの楽しさを味わいつつ作業がスムーズに進む心地よさを感じながら翻訳することができるとしたら、先生がおっしゃった「人生とは遊ぶこと」を翻訳作業の中でさえも体現できるのではないかと思います。
「翻訳を楽しみたい」方に、先生の講座をぜひおすすめします。
TT様
治験翻訳セミナー(I)
Xmasイブ前夜は「ミズトラの会」今年最後のセミナーでした。随分増えてきた医薬翻訳者さんたちのために今回は初めて医薬翻訳セミナーを開催することができました。講師としてお呼びしたのは治験翻訳講座の学校「アルパ・リエゾン」の代表、有馬貫志先生です。
先生は高校教師から単身英国へ渡り、英国で言語学の学位を取り、その後研究を深めた後、帰国して医薬翻訳の道に入られた、異色と言ってよい経歴をお持ちの方です。いつもの翻訳講座とは違い、言語学の面からの深いアプローチに新鮮な驚きを覚えました。翻訳テクニックや専門技術、ツールの使用法などを教える講義ももちろん実務には役立つのですが、人間の歴史や地理と絡めた言語の発展、人はどのように言語を習得していくのか、第一言語と第二言語(その人が母語(第一言語)を習得した後に、あらためて学習し使用することができるようになった言語)との関連性など、大学で言語学をかじった私には普段にもまして興味深い内容でした。有馬先生は「先生」という仕事は「天職」だと言っておられます。自称だけではなく私の目からもそう思えます。
他分野もそうですが医薬の分野はグローバリゼーションの勢いがすさまじく、優秀な英訳者はまだまだ足りていないのが現状のようです。日本の現状を見ても、また外資系の製薬会社が上位のほとんどを占める世界の現状を見ても、医薬業界のスタンダードランゲージは当然英語であり、その重要性がさらに増していくことは明らかです。文系といわれる世界に理系が登用されていくように、医薬の世界も文系の登用が増えているらしく(理系/文系という分け方は日本特有で、あまり好きではないのですけど一応)、ボーダーレス化が進んでいくと思われます。翻訳の仕事をしていく上で、専門知識の面では随分後れをとっているとしても、言葉を扱うという点では長年訓練を積んできた私たちに強みもあると思います。技術や知識を理解することは確かに困難です。でも言葉のセンスというものも一朝一夕に身につくものではありません。
いつものように打ち上げも楽しく♫
さて、今まではセミナーの模様を私KYOKO YAMASHITAがレポートしてきましたが、もちろん完全ではなく、様々な人々の感想も載せていきたいので数名の人からのレポートもちょうだいいたしました。適宜紹介して参りますためご参考になさってください。
先生は高校教師から単身英国へ渡り、英国で言語学の学位を取り、その後研究を深めた後、帰国して医薬翻訳の道に入られた、異色と言ってよい経歴をお持ちの方です。いつもの翻訳講座とは違い、言語学の面からの深いアプローチに新鮮な驚きを覚えました。翻訳テクニックや専門技術、ツールの使用法などを教える講義ももちろん実務には役立つのですが、人間の歴史や地理と絡めた言語の発展、人はどのように言語を習得していくのか、第一言語と第二言語(その人が母語(第一言語)を習得した後に、あらためて学習し使用することができるようになった言語)との関連性など、大学で言語学をかじった私には普段にもまして興味深い内容でした。有馬先生は「先生」という仕事は「天職」だと言っておられます。自称だけではなく私の目からもそう思えます。
他分野もそうですが医薬の分野はグローバリゼーションの勢いがすさまじく、優秀な英訳者はまだまだ足りていないのが現状のようです。日本の現状を見ても、また外資系の製薬会社が上位のほとんどを占める世界の現状を見ても、医薬業界のスタンダードランゲージは当然英語であり、その重要性がさらに増していくことは明らかです。文系といわれる世界に理系が登用されていくように、医薬の世界も文系の登用が増えているらしく(理系/文系という分け方は日本特有で、あまり好きではないのですけど一応)、ボーダーレス化が進んでいくと思われます。翻訳の仕事をしていく上で、専門知識の面では随分後れをとっているとしても、言葉を扱うという点では長年訓練を積んできた私たちに強みもあると思います。技術や知識を理解することは確かに困難です。でも言葉のセンスというものも一朝一夕に身につくものではありません。
いつものように打ち上げも楽しく♫
さて、今まではセミナーの模様を私KYOKO YAMASHITAがレポートしてきましたが、もちろん完全ではなく、様々な人々の感想も載せていきたいので数名の人からのレポートもちょうだいいたしました。適宜紹介して参りますためご参考になさってください。